BS特集 人類はがんを克服できるのか
今日のお雑煮は会心の出来。昨日よりだしを濃いめにしたのが良かったみたいだ。
テレビを点けたら、たまたまやっていた番組が異常に面白かった。去年放送されたNHKスペシャル「がん 生と死の謎に挑む」の内容に加えて、番組内に収まりきれなかった取材内容を追加した
BS特集 シリーズ立花隆 思索紀行 人類はがんを克服できるのか
の全3話連続再放送。見始めたのが第1話の終盤で、第2話と第3話はちゃんと観た。第1話もちゃんと観たかったので、NHKオンデマンドの見逃し番組サービスに登録してみる。古いMac miniにWindows7 RCをインストールしていたので助かった。24時間レンタル(?)で315円、意外に高い。NHKに足元見られてるな。
とにかく、転移させない事。
抗癌剤が癌細胞に届かない。
癌細胞は血管内皮細胞増殖因子(VEGF*1)を分泌する事で、通常の血管より細い血管を、癌組織内に細かく張り巡らせる。この血管には血液が充分に行き渡らないため、抗癌剤を奥の方に送る事が出来ない。抗血管新生薬を使うとVEGFを抑える事は出来るが、確かに細かい血管は出来なくなるものの、中途半端に太くなった血管にはもう効かない。そのうち、癌細胞はVEGFと同じ作用を持つ別の物質を出す様になる。
癌細胞は移動して隠れる。
HIF-1と呼ばれる低酸素誘導因子*2蛋白質は、正常な細胞の場合、酸素で分解されてしまって細胞内に残らない。ところが、癌組織の様な血液が余り行き届かない所では、HIF-1が細胞内に貯まってしまう。すると細胞は新陳代謝の仕組みを変えてしまい、低酸素で死ななくなる上に細胞の移動能力が上がる。これにより、癌の浸潤、転移が始まる。
HIF-1は、数百の遺伝子の制御に関わっており、その中には生命維持に必要なpathwayもたくさんある。例えば、初期段階の胎児は血管がなく低酸素状態にあるが、その際にもHIF-1が重要な役割を果たす。HIF-1を阻害してマウスの癌を無理やり消して喜んでいたら、実は正常な細胞もやられている事が。
また、癌は免疫システムを悪用する。癌細胞がサイトカインを分泌して「炎症が起こった」という嘘の情報を流すと、マクロファージ、好中球、リンパ球といった白血球や樹状細胞などがすっ飛んできて、VEGFやプロテアーゼなどを分泌する。細菌などの異物はそれで駆除出来るのだが、癌の場合、周囲の細胞が壊されて癌細胞が移動しやすくなったり、血管が成長して癌組織の成長を促されたり、良くない方向に作用する。
癌細胞(例では白血病?)は、正常細胞の組織に簡単にもぐりこめる上に、正常細胞から栄養を供給されてもらえる。転移先の組織に癌細胞がもぐりこんでしまったら、血液検査にひっかからなくなる。
同じ癌でも、異常遺伝子は人によってばらばら。
癌ゲノムプロジェクトというのが始まって、50種類の癌に対して1種類500人以上サンプルを集め、全部のDNAで塩基配列解読を行っている。現在までに得られている結果でも、同じ乳癌なのに、患者によって遺伝子異常の場所と数が全然違う事が分かっている。同じ癌でも、遺伝子異常の細かいタイプごとに、別々の抗癌剤を開発しなければいけないかもしれない。下手すると患者一人一人ごとに。