Kpp その3

一般公開の続き。

元山研究ユニット

胎児性アルコール症候群の研究。発生の上でマウスの胎児がアルコールの影響を最も受けやすいのは、胎生7.75日目(E7.75)近辺。この時期の胚ではソニック・ヘッジホッグ遺伝子(Shh)が体の中央(正中)にある中軸中胚葉細胞で発現している。Shhの活動が阻害されると、脳や顔の中央部分が充分に形成されない奇形、全前脳症*1を引き起こす事がある。

アセトアルデヒドの影響で発生する活性酸素がどうも良くないらしい。

創発知能ダイナミクス研究チーム

ネッカーキューブルビンの壺、茅原伸幸氏によるSilhouette Illusionといった錯視図形は、同じ絵を2通りの物に解釈する事が出来る。それまで分からなかった図形が「見えた」時には、脳の離れた位置で脳波がシンクロして位相が揃う、という同期現象がみられる。ホタルの発光同期現象でみられる様な、結合振動子の動力学。

別の話題として空間学習の話。脳の海馬にあるplace cellは、場所を覚えたり道順を把握したり、といった空間認知・空間記憶に関与している。海馬で局所場電位というものを測ると、安定した周期で振動していてシータリズム*2と呼ばれる。周波数は4Hz〜12Hz。

新しい環境に入れられたラットがA→B→C→Dの順番で場所を移動すると、place cell『A』『B』『C』『D』も、輪唱の様にシータリズムの周期で発火する。この輪唱は微妙にずれていて、シータリズム1周期の中でもABCDの順に発火している。このずれた輪唱で発火が繰り返す事により、神経回路のネットワークが形成されて位置関係が記憶される。

*1:全前脳胞症、HPE。無分葉型(alobar)、半分葉型(semilobar),分葉型(lobar)の種類がある。

*2:theta rhythm、シータ位相歳差