Kpp その2

理研の和光研究所一般公開の続き。

吉田化学遺伝学研究室

p53は癌抑制遺伝子として有名。正常な細胞ではMDM2*1がp53にポリユビキチン鎖をつけるので、p53はプロテアソームによって分解されてしまう。癌因子が発生すると、p53はアセチル化されポリユビキチン化が阻害される。p53が安定に存在出来るので、めでたく癌を抑制する事が出来る。

DNAはヒストン八量体*2の周りを1.7周(146塩基対分)巻き付くヌクレオソーム構造を取っている。ヒストンからはヒストンテールと呼ばれる直鎖状のタンパク質が伸びていて、巻き付いたDNAが緩まない様に押さえている。このヘテロクロマチン状態では遺伝子が発現しない。

p53遺伝子周辺で、ヒストンテール末端(N-terminal)のリシン基がアセチル化酵素HAT)でアセチル化されると、ヒストンテールが離れてDNAが緩む。このユークロマチン状態になると、遺伝情報の転写が活性化される。ここで癌細胞の場合、せっかくアセチル化されたヒストンが脱アセチル化酵素HDAC)によってヘテロクロマチン状態に戻されてしまうので、p53遺伝子の発現が抑制される。

この研究室では、tricostatine A(TSA)、FK228といったヒストン脱アセチル化阻害物質を研究しており、毒性の少ないFK228は抗がん剤としての効果が期待されている。FDA第2相臨床試験まで行っている様だ。

ちなみに、Chris Cutler「p53」(1995 ReR Megacorp)もこのp53の事らしい。

*1:murin double minute 2

*2:H2AH2B、H3、H4が2分子づつ。histone octamer。