GFPはもはや日常語 その1

藤と八重桜の花が咲く頃、理化学研究所の一般公開。和光市は曇り。

将棋思考プロセス研究プロジェクト

日本将棋連盟富士通の協力による研究プロジェクト。将棋のプロ棋士とアマチュア四段に駒の並びを5秒間見せて、脳の活動にどのような違いがあるか測定した。「定石の駒組」と「ルールを無視してデタラメに配置した駒組」を見せる。脳波測定により、

プロ棋士の場合

  • 定石を見ると、0.1秒後に前頭部が活動する。
  • デタラメ配置の場合、0.1秒後に側頭部が活動する。

マチュア4段の場合

  • 定石でもデタラメ配置でも、反応に殆ど差がない。
  • 盤面を見て、0.3秒後に前頭部も側頭部も活動する。

更にfMRIを使って、活動部位の細かい位置を調べていた。詳しくは富士通のプレスリリース参照

動的認知行動研究チーム

チームリーダーの谷淳氏がSony CSLにいた頃に発表を見た事がある。課題を解こうとして試行錯誤しているロボットが、急に閃いて賢くなった瞬間を可視化した感じの図があって、詳細は分からなかったものの非常に面白かった。一般公開に行く度、展示が無いか探すのだが毎年見つからない。今年は展示があったんだが、

ロボットが、教わった事を組み合わせて、教えていない事まで出来る様になった。

という説明で、何が何だかさっぱり分からん。色々読んでみると、

初期値を利用した行動計画

ロボットの神経回路網に人間から課題を与える時、入力を入れる神経をゴール・ニューロン(GN)と呼ぶ事にする。ロボットに動作を学習させる際、GNの活性状態の初期値を教える動作ごとに変えてやる事で、別々の動作を混同する事なく学習させる事が出来る。このロボットのGNに入力を与えると、覚えた動作を使って課題を解き始める。

階層型神経回路モデル

神経回路網は、「ボトルネック」で区切られた階層構造を持っている方が賢い。連続時間系のリカレントニューラルネット*1において、「均質な神経回路網」と「複数のエリアがあり、エリア間が数少ない神経で繋がれた(情報の流れにボトルネックのある)神経回路網」を比較すると、後者の方が賢い。賢いロボットは特徴として、

  • センサ入力やモータ出力に繋がっている下階層のニューロンは頻繁に活動する。
  • GNを含む上階層のニューロンはゆっくり活動する。
  • 上の階層が全体像をつかんで大まかな指示を出し、下の階層が細かい処理をするイメージ。
今回の成果

3階層構造の神経回路網を持つロボットに、積み木を動かす5つの動作を学習させた。「台の上に積み木を2個横に並べる」という教えていない複雑な課題を与えると、学習した動作を組み合わせて課題を解いた。

*1:CTRNN : Continuous Time Recurrent Neural Network