Kpp その1

八重桜の季節がやってきたので、理化学研究所・和光研究所の一般公開。

岩崎先端中間子研究室

K中間子strange1個、upまたはdown1個、合計2個のクォークから出来ていて質量が494MeV/c2もある。陽子中性子の半分位で、電子の0.5MeV/c2に比べると遥かに巨大だ。

通常の原子では原子核の周りを電子が取り巻いているが、e-μ-p-といった荷電粒子で置き換えた原子を作る事は可能で、エキゾティック原子と呼ばれる。一つめのプロジェクトでは、K-中間子を使ったエキゾティック原子に着目した研究を行っている。K-は重いので、内側の軌道に落ちていく。1S軌道まで落ちてくると、K-は巨大な為に軌道が原子核内に食い込んでいて、しまいには原子核と融合すると予想される。

通常、原子核内では陽子(p)と中性子(n)がπ中間子をキャッチボールする「強い相互作用」で結合している。このπ中間子を介在した結合に比べて、K中間子と核子との結合は非常に強力で*1

pn 2.2 MeV 2H原子核
K-p 27 MeV
ppnn 28.3 MeV 4He原子核
K-K-pp 117 MeV

K中間子が原子核と融合すると、非常に高密度の原子核が出来ると予想されている。別のプロジェクトとして、K-pp原子核を作る試みがある。3He原子核にK-中間子ビームを当てるとK-ppを直接作る事が出来る、と期待されている。ついでに、K-ppが崩壊した時に出来る陽子とπ-も測定出来ると完璧*2。1回の実験で使う3Heは中ジョッキ1杯分、値段が数千万円。

K- + 3He → K-pp + n
K-pp → Λ + p
Λ → p + π-

画像:Nazo nazo men, Riken, Wako, Saitama, Japan / Apr. 19 2008