仏像 〜 一木にこめられた祈り
上野の東京国立博物館で特別展「仏像 〜 一木にこめられた祈り」を観てきた。23日にも観に行ったが、お金を下ろすのを忘れて図録が買えなかった。当初は円空の木彫りの仏像をちょっと観てみたい、程度の軽い興味で行ってみたのだが、想像を遥かに越えて素晴らしい展覧会だった。
奈良時代後半から平安時代中期にかけて、一本の木材から仏像を彫り出す一木造の技法が盛んに使われた。この展覧会ではこの「一木彫*1」の仏像を紹介している。平安後期に寄木造が主流になった後も、地方では一木造は廃れずに残り、江戸時代の円空や木喰に受け継がれる。
気に入った仏像はいっぱいあるが、立ち姿がきれいなものに惹かれる。余分な力が抜けて、自然に出てきたポーズ。全身が連携されて、体の線や重心に流れが感じられる。タメのある動き。
- 宝誌和尚立像(京都・西往寺)42. 特にすごい
「顔が割れている所」ばかり注目されるが、足元まで含めた立ち姿が美しい。
- 聖観音菩薩立像(奈良・璉珹寺)18. 特にすごい
重心は高いが、腰の入ったいい蹴りを打ちそう。
- 十一面観音菩薩立像(和歌山・慈光円福院)30.
世の中の何もかもに疲れて果てた表情にウケた。
- 十一面観音菩薩立像(山形・宝積院)5.
- 十一面観音菩薩立像(奈良・秋篠寺)28.
- 聖観音菩薩立像(岩手・天台寺)38.
- 多聞天立像(奈良・大安寺)14.
- 四天王立像 その三・その四(広島・古保利薬師堂)34.
- 聖観音菩薩立像(滋賀・来現寺)32.
円空の木彫りの仏像がまた大胆かつ細心。例えば、十一面観音菩薩立像 円空作(岐阜・高賀神社)43.は荒削りな彫りだが、よく見ると腰の重心を左に寄せた体全体のバランスがしっかり表現されている。
仏像に興味が出てきた。この展覧会は来週末12/3(日)まで。
*1:いちぼくちょう