「ニート」玄田有史、曲沼美恵

「ニート フリーターでもなく失業者でもなく」(幻冬舎)2004/07/10発行
2003年第1四半期において、義務教育の終了した15歳以上25歳未満の若者1500万人弱のうち、

  • 就業者 573万人(正社員、パート、フリーター)
  • 失業者 72万人(仕事を探していて、仕事があればすぐ働ける)
  • 在学中、就職内定済 91万人
  • 浪人生、進学希望 14万人
  • 在学中、在学希望 579万人
  • 就業希望 129万人

残りはフリーターでも失業者でもなく、学校に進学する意志も、働く意志も無い人々で、1997年:8万人、2000年:17万人、2003年:40万人と年々急増しています。イギリスでは、既に1999年の「Bridging the gap」という報告書によって、大きな社会問題として取り上げられている様です。Not in Education, Employment, or Trainingを略してこれらの層はNEETと呼ばれています。

最近、出生率が1.29になって年金制度への影響が話題になりましたが、NEETの問題を含めると更に深刻です。無所得層が拡大すると年金制度にも医療保険制度にも税収にも悪影響を与えるし、職業訓練されていない層が拡大すると労働力不足も懸念されます。ただ、この本は余りこういった社会問題の分析には踏み込まず、NEET層の人達への取材、更にNEET予防に繋がるかもしれない中学生への職業意識啓発の取り組みの紹介に力を入れています。その中で、兵庫県の「トライやる・ウィーク」、富山県の「地域に学ぶ14歳の挑戦」といった、義務教育の中学2年生に5日間職場体験をさせるという取り組みを紹介しています。これはかなり興味深く読みました。実際、生徒の意識向上に、かなり効果が上がっている様です。

ただ、99年11月に始まったばかりのこの試みが現実にNEETを予防するかどうかはまだ未知数です。NEETを予防するという目的で始められた訳でも有りません。また、なかなか実態のつかめないNEETを捉える上で、NEETの意識調査の結果から「人づきあいなど会社生活をうまくやっていける自身がない」「自分に対する自信の欠如」のキーワードに着目していますが、なるほどとは思うものの、NEETというものを理解できたという気にはなれません。もう少し突っ込んだNEETの分析や、イギリスでどういう対策がなされてどういう効果があったのかといった辺りにも言及してほしい所です。

結局、NEETの本にはなりきれていないと思いますが、この本をきっかけに関心を持つ様になりました。