シュトックハウゼン「リヒト=ビルダー」

「日本におけるドイツ年」の一環として、Karlheinz Stockhausenが来日。<東京の夏>音楽祭の公演を観に天王洲アイルへ。アートスフィアに行くのは今回が初めて。お腹が空きそうな気がしたので、隣のアムスカフェ「Sucre en Poudre(シュクル・アン・プードル)」でブルーベリーのクレープとペリエ。「アムス」はAmsterdamの事かと思っていたら、インテリアと雑貨の店「ams」店内にあるという事らしい。

最初の曲は『Licht-Bilder (3. szene vom Sonntag aus Licht)』(2002)。現代音楽でも歌曲系には苦手意識があるのだが、この演奏はなかなか良かった。26年かけて作った連作オペラ「Licht」で最後に作った曲。

バセット・ホルン(F管クラリネット)、フルート、トランペット、テノール歌手の4人が立ったまま演奏。昔のSF映画で、人間そっくりの宇宙人の王族が着てそうな衣装。何も無いステージの上で演奏しながら歩いて移動したり、演奏しながらその場でターンしたりする。リズムの輪郭のはっきりしたものをやるかと思っていたが、(総音列)セリーどうしのハーモニーを重視したアンサンブル。つば抜き音や唇を鳴らす音なども、音像を立体的にするアクセントとして時々使っていた。トランペットはミュートを4つほど次々に交換しながら演奏。演奏は素晴らしく、美しい音色と有機的なアンサンブルで緊張がほぐれてリラックスしてきた。テノールの声も良い。何度となく居眠りしそうになったが、これは悪い意味ではなく良い意味だ。Mauricio Kagelの室内楽を思わせる、と思っていたら後で友人に同じ感想を先に言われてしまった。4人編成だと思っていたらシンセサイザー担当が舞台袖で何かやっていた様だ。

もう一曲は電子音響作品『Kontakte』(1958-60)。休憩時間に飲んだアイスコーヒーでお目目ぱっちり。会場全体は真っ暗で、正面の壁に丸くスポットライトが当たっている。ステージには演奏者の姿は無く、テープ演奏だった*1。エコー音の音像が会場いっぱいに広がるのは新鮮で、さすがに家で聴くのとはひと味違うが、正直な所、テープをバックに使っていいから楽器の生演奏とライブエレクトロニクスにチャレンジして欲しかった。

カーテンコールで客が拍手してなかなか許してくれないので、Stockhausenは7、8回ステージに上がったり降りたり大変だった。客席内のミキサー卓に座っていたので、終演後はサイン会+握手会と化していた。

アイリッシュパブThe Roundstone」で飯。大崎「The Shannons」の系列らしい。Fish and Chipsといい、ギネスで煮込んだアイリッシュシチューといい硬派な味でおいしい。Red BiddyというAle Beerがとっても気に入った。土曜は21時過ぎラストオーダーで22時閉店というのがつらい。

*1:さすがにハードディスクかもしれない